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捨てられなかったマンガ達について話したい


by comic_robo
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水島新司「下町のサムライ」

水島新司「下町のサムライ」_f0147033_164588.jpg
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私が読んだ本:水島新司「下町のサムライ」全3巻(キングコミックス、少年画報社)
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下町の裕福でない家庭に育つ吾郎。周囲にも同じ境遇の少年達がたくさんいて、みんな一生懸命働いている。この作品では、どんな試練に対してもくじけず明るく前向きにがんばる吾郎が、親友のチビ、力丸達とともにスポーツ、特にサッカーを通して人として成長していく姿を描く。裕福な階層との軋轢もリアルに描かれている。

私が最初にこの作品を読んだのは、少年キング連載時で、昭和41年頃でした。相撲を題材とした読み切り短編から連載に移行したと記憶しています。水島新司といえば野球マンガで有名ですが、このころは野球をテーマにした作品はあまり描いていませんでした。大阪の日の丸文庫から下町の人情物のような作品を多く発表していたと思います。

下町のスポーツ少年の物語と言えば、先にちばてつやの「ハリスの旋風」がヒットしており、「下町のサムライ」はその影響を濃く受けているようです。「ハリスの旋風」は後世に残る名作で私も大好きな作品です。これに対して、「下町のサムライ」は、あまり有名な作品ではないかもしれません。でも私は水島新司といえば、この作品が一番好きなんです。この作品を今読み返してみると、薄汚れた街、その街でうごめく恵まれない人々など、作品のトーンはやや暗めです。しかし、昭和30年代といえば。日本はまだまだ全体的に貧しく、びんぼうである事はむしろ普通の状態でした。みんな、継ぎ当てした服を着てましたし、落ちてる鉄をくずやさんに売ったりしたもんです。私は当時、大阪の同じ様な街の近くに住んでおり、吾郎のような少年はたくさんいました。
このため、むしろ身近な世界のドラマとして、この作品を受け止めていたのかもしれません。とにかく私には忘れられない作品です。

ちなみに、吾郎の親友の一人、力丸のあだなはドカベンです。名作ドカベンの世界はこの作品が雛形かもしれません。というより、水島先生はいつの時代も同じ下町人情の世界を描き続けられているのですね。

水島先生は、今年で画業50年とのことです。
by comic_robo | 2007-07-14 21:57 | 少年マンガ