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私が読んだ本:松本大洋「花男」全3巻(ビックスピリッツコミックス、小学館)
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長島茂雄を敬愛し、いつか巨人軍の4番を夢見て妻子と離れ日々野球修行に励む風変わりな男。実は、かつて高校野球屈指のスラッガーで、なぜかプロにいかなかった今でも町内の人々はみな彼のファンである。 別居していた息子の茂雄が、突然花男と共同生活をするところから物語は始まる。淡々と話が進むが、それまで父親を蔑視しているかの言動を繰り返していた茂雄が、「一緒に暮らそう」と花男に言った言葉がトリガーとなり、花男は巨人入りを決断する。不振にあえいでいた巨人も、かつては拒否し花男がプロ入りしなかった原因となった花男の過大な要求を飲む。それは、背番号「3」のユニフォームであった。花男は入団発表の日に代打サヨナラ満塁ホームランを放ち鮮烈なデビューを飾る。ラストは日焼けした姿で野球に励む茂雄、花男が野球修行にはげんだ町の光景で終わる。
おそらく、私がここ10年くらいで 一番繰り返し読んでいる作品。何がいいのかと考えるに、ノスタルジー、アナキー、シュールが混在した雰囲気と情景。ところどころに垣間見れる家族愛、友情、思いいれ。最後に胸のすくような一発!。というのが私の感性にストレートに入ってくるのかもしれません。
「冷たいか、茂雄。それが海だ!!」「そしたら二人で秋ナス食って、ふふふ。バンダイの野球ゲームだァ。」最後の「ビリビリしたァ!!」などなんとなく胸にしみこむセリフもたくさんあります。
何かを感じさせ、作品全体がちゃんとまとまっているところが作者の力量を感じます。もっとも、松本大洋氏は、その後いろいろな作品を発表し、今や漫画界に確固たる地位を築かれていますが、私はこの作品以外読んでいません。この作品がとても良いので他の作品に移ることがなかなかできないのかもしれません。
さて、主人公の花男はいつも目の下に反射防止の墨を塗っています。(あるいは、眼窩の突起かもしれませんが。。)手塚ファンの私には、この花男の顔が魔神ガロンに、そして、茂雄はガロンの良心であるピックに見えてしまいます。実際、作中でも茂男は花男の言動に大きい影響を及ぼす存在として描かれています。もちろん、これは私の勝手な思い込みですれど。。。
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今でも読める本:松本大洋「花男」全3巻(ビックスピリッツコミックススペシャル、小学館)
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by comic_robo
| 2007-11-28 01:02
| 青年マンガ