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捨てられなかったマンガ達について話したい


by comic_robo
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松本大洋「花男」

松本大洋「花男」_f0147033_113070.jpg


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私が読んだ本:松本大洋「花男」全3巻(ビックスピリッツコミックス、小学館)       
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長島茂雄を敬愛し、いつか巨人軍の4番を夢見て妻子と離れ日々野球修行に励む風変わりな男。実は、かつて高校野球屈指のスラッガーで、なぜかプロにいかなかった今でも町内の人々はみな彼のファンである。 別居していた息子の茂雄が、突然花男と共同生活をするところから物語は始まる。淡々と話が進むが、それまで父親を蔑視しているかの言動を繰り返していた茂雄が、「一緒に暮らそう」と花男に言った言葉がトリガーとなり、花男は巨人入りを決断する。不振にあえいでいた巨人も、かつては拒否し花男がプロ入りしなかった原因となった花男の過大な要求を飲む。それは、背番号「3」のユニフォームであった。花男は入団発表の日に代打サヨナラ満塁ホームランを放ち鮮烈なデビューを飾る。ラストは日焼けした姿で野球に励む茂雄、花男が野球修行にはげんだ町の光景で終わる。


おそらく、私がここ10年くらいで 一番繰り返し読んでいる作品。何がいいのかと考えるに、ノスタルジー、アナキー、シュールが混在した雰囲気と情景。ところどころに垣間見れる家族愛、友情、思いいれ。最後に胸のすくような一発!。というのが私の感性にストレートに入ってくるのかもしれません。
「冷たいか、茂雄。それが海だ!!」「そしたら二人で秋ナス食って、ふふふ。バンダイの野球ゲームだァ。」最後の「ビリビリしたァ!!」などなんとなく胸にしみこむセリフもたくさんあります。

何かを感じさせ、作品全体がちゃんとまとまっているところが作者の力量を感じます。もっとも、松本大洋氏は、その後いろいろな作品を発表し、今や漫画界に確固たる地位を築かれていますが、私はこの作品以外読んでいません。この作品がとても良いので他の作品に移ることがなかなかできないのかもしれません。

さて、主人公の花男はいつも目の下に反射防止の墨を塗っています。(あるいは、眼窩の突起かもしれませんが。。)手塚ファンの私には、この花男の顔が魔神ガロンに、そして、茂雄はガロンの良心であるピックに見えてしまいます。実際、作中でも茂男は花男の言動に大きい影響を及ぼす存在として描かれています。もちろん、これは私の勝手な思い込みですれど。。。



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今でも読める本:松本大洋「花男」全3巻(ビックスピリッツコミックススペシャル、小学館)
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# by comic_robo | 2007-11-28 01:02 | 青年マンガ
まんが:荘司としお、原作:高原弘吉「魔球の王者」_f0147033_5572670.jpg

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私が読んだ本:まんが:荘司としお、原作:高原弘吉「魔球の王者」全3巻
                        (キングコミックス、少年画報)       
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不慮の事故で野球の選手生命を絶たれた丸目鉄心は、素質のある孤児たちをひきとって山中にこもり野生児として育てながら野球の猛特訓を続ける。一方の丸目のライバルだった平賀も野球塾をつくり徹底した科学トレーニングで子供たちを鍛えていた。いずれも目的は、野球の超人チームをつくり大リーグを破ることだった。世間から隠れひっそりと鍛錬してきた超人チームであったが、しだいにその存在が知られていくことになり、さまざまな事件に遭遇する。最後は、丸目、平賀合同チームがアメリカに渡り大リーグの選抜チームを破るシーンで終わる。


この本が出た昭和40年代は、少年たちにとって野球が一番人気があるスポーツで、王、長島などは国民的ヒーローだった。しかし、日本野球と大リーグとの実力差は免れず、時折来日する大リーグのチーム、たとえばドジャース、オリオールズなどには歯がたたなかった。太平洋戦争の敗戦についての複雑な感情もあって、この作品のように、日本のスーパーマンが大リーグをこてくぱんにやっつける。というストーリーは日本人にとって胸のすく空想ロマンだった。イチローや松坂が大活躍している現在では、想像がつかないが、そういう時代だったのである。

庄司としお先生はすでに「夕焼け番長」をヒットさせていたが、この後「サイクル野郎」というロングランのヒット作も生み出した。
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今でも読める本:荘司としお、原作:高原弘吉「魔球の王者」全3巻(コミックパーク)
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# by comic_robo | 2007-10-27 05:57 | 少年マンガ
吉田竜夫、原作:梶原一騎「ハリス無段」_f0147033_2338629.jpg

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私が読んだ本:絵吉田竜夫、原作:梶原一騎「ハリス無段」全3巻
                        (サンデーコミックス、秋田書店)       
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(ストーリー)
黒い柔道着、白い帯で講道館柔道に挑戦するため上京してきた風巻竜は、ハリス博士とともにハリス流柔道を立ち上げるが、元来の正義感から講道館に挑戦して来る古武術の達人、海外の強敵などと闘いつづけ、しだいに日本柔道の守護者的立場となる。ハリス流スクリュー落とし、五輪回転投げなど必殺技もあみだしはてしない闘いを続け行く。


タイトルにつけられた「ハリス」は、ハリスガムを販売していたカネボウがスポンサーとしてタイアップしていたためで、連載されていた少年マガジンには毎号ハリスガムの広告が掲載されていた。ちなみに、ちばてつや「ハリスの旋風」もカネボウ提供でアニメ化されている。カネボウがスポンサーとなり吉田竜夫原作で竜の子プロでアニメ化された宇宙エースでもガムのようなものを食べると強く少年ヒーローが登場する。

梶原一騎と吉田竜夫は、「チャンピオン太」でもペアを組んでいた、ハリス無段は、梶原一騎原作作品としては、初期のものだが、次々現われるライバル、山ごもり特訓などであみだした必殺わざ、ストーリーの合間につづられる人情話など梶原作品のエッサセンスはすでに確立されている。

子供は誰が原作だろうと中身が面白いことがすべてである。子供にとって梶原作品は本格的な格闘技が描かれている最初のものだったように感じていたと思う。それまでも、柔道漫画はあったが、人情話的要素が強く格闘技そのものは、ちゃんと描かれていなかったように思われた。

秋田書店のサンデーコミックスは、必ずしも連載された順番に単行本としていない場合が多い。話しが不自然なところもあるので、この本もたぶんそうだったと思われる。主人公は「無段」だが、確かあまりに強いので自分は「100段」と自称するライバルなどもいたと思うが、この本ではカットされているようである。「100段」が出て来るなんて、いかにも少年マンガらしい“やんちゃさ”である。
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今でも読める本:漫画:吉田竜夫、原作:梶原一騎「ハリス無段」上、中、下(マンガショップ)
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# by comic_robo | 2007-10-17 23:38 | 少年マンガ
川崎のぼる「アニマル1」_f0147033_2581740.jpg

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私が読んだ本:川崎のぼる「アニマル1」全4巻(ゴールデン・コミックス、小学館)       
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元気でやんちゃな中学生の東一郎は、父親と七人兄弟とで船上生活をしている。転校した中学校でレスリング部に入ると、生来の負けん気と素直さでめきめきと強くなって行く。いろいろなライバルも登場。必殺わざも開発。最後にはメキシコオリンピック日本代表(中学生なのに!)に選ばれ金メダル獲得を誓うシーンで終わる。

1967年少年サンデー連載作品。メキシコオリンピックの前年で、当時日本が強かったレスリングを取り上げた。スポ根マンガがまっさかりで、他にないスポーツを題材とする企図があったと思われる。

本題のレスリングはともかく、一郎の兄弟達が紙上で元気に暴れているのも本作品の特徴で、そこに描かれた彼らの姿、ユーモアは、川崎作品のヒット作「いなかっぺ大将」を彷彿とさせる。海族ごっこ、一列に並んで銭湯など懐かしいシーンが多い。「貧しいけど、明るく元気」という当時のマンガの定型的なモチーフではあるが、暗さを感じさせない。

この作品で私にとって最も印象的なシーンは、ラストで一郎がオリンピック代表となった時、他の兄弟達が新聞記事を切り抜き額に入れて一郎に見せたシーン。一郎の弟達は、版組の関係で凸凹していた一郎が書かれている部分をそのまま切り取り、額も凸凹の形で作った。これを見た一郎は、涙ちょちょぎれでずっこける。兄弟達はいつも一郎を心より応援してきたが、その象徴的シーンであった。この凸凹額縁のシーンは、私をいつも感動させ、爽快な笑いにさそうのである。

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今でも読める本:川崎のぼる「アニマル1」全5巻(イーブックジャパン(電子書籍))
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# by comic_robo | 2007-10-01 02:58 | 少年マンガ
五十嵐浩一「ペリカンロード」、「ペリカンロードⅡ」_f0147033_154538.jpg

五十嵐浩一「ペリカンロード」、「ペリカンロードⅡ」_f0147033_11082.jpg

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私が読んだ本:五十嵐浩一「ペリカンロード」全14巻(ヒットコミックス、少年画報社)
       五十嵐浩一「ペリカンロードⅡ」全5巻(ヤングキングコミックス、少年画報社)
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ペリカンロード:
優等生の憲一があこがれの原付バイクを手に入れてから、いろいろな事件を経験しながらライダーとして人として成長していく物語。最強の族FHHとの抗争に巻き込まれるが、しだいにFHHのリーダー坂上との友情を育んでいく。しかし、坂上はアーミーとの抗争で憲一の目の前で壮絶な最期をとげる。。。その後は、残された人々の葛藤を描く。

ペリカンロードⅡ:
叔父がバイク事故で亡くなり、母にバイクを禁止されていた冬馬。内緒でバイクに乗り始めてから、今はなき幻の最強チームの存在を知る。手がかりは「f」という文字。このfこそ、初代リーダー坂上が築き上げたFHHで、叔父雅美はその四代目のリーダーだった。FHHの宿敵ザウと冬馬の軋轢をきっかけに、雅美の甥である冬馬を守るため、かつてのFHHのメンバーが再び集結しザウと対決。ともに大半のメンバーを失う悲惨な抗争を繰り広げ事件は収束。「f」も静かに去っていく。

最初の作品が発表されたのは1983年、Ⅱは2002年で約20年のインターバルがある。ペリカンロードは好きな作品だったので、最近マンガの新作はほとんど読んでいないが、ペリカンロードⅡを書店で見つけた時思わず買ってしまった。実際に読んで見ると、あの凶暴なFHHが見え隠れしていたり、最初の作品に登場したキャラも何人か出てくるので大変感慨深かった。

両作品とも、坂上、雅美それぞれの死が重要なモチーフとなっている。いずれも、仲間から離れた単独行動の果てに亡くなったため、残された仲間は、答えなき死の理由探しと償いのために、果てしなくさまようことになる。作品全体のトーンはやや暗め。特にペリカンロードⅡは、かなりバイオレンスなシーンが多い。連載された雑誌が、少年誌から青年誌になっためか?、あるいは、刺激的に描かないとアピールしない時代となったためであろうか?FHHが出てこないと、ただの族マンガに見えるかもしれない。

冬馬が危機に陥った時、かつてのFHHメンバーの過去にこだわり煮え切らない態度に業を煮やし、冬馬の仲間の清純が叫ぶ以下の言葉には、自分の言動に重なる部分もあっためドキッとした。

曰く
「昔にしか いいことなかったみてえなセリフはたくさんなんだよ!」
「かっこいいことも すげえことも あんたらの過去にしかねえなんてアリかよ!!」
「じゃあ オレたちには なにもねえってのか!?」


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今でも読める本:五十嵐浩一「ペリカンロード」全18巻(少年画報社文庫、少年画報社)
        五十嵐浩一「ペリカンロードⅡ」全5巻(ヤングキングコミックス、少年画報社)
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# by comic_robo | 2007-08-30 06:00 | 青年マンガ